「ツェルニーの練習曲は良くない」、「その奏法は古い」、「取り組むのは必要悪だ」 そんな声を耳にする事があります。 果たしてそうでしょうか?

 確かに、ツェルニーの練習曲は、ショパンやリストのような芸術的に高度な内容を備えた練習曲ではありません。 そして、子供のコンクールの課題曲になろうものなら、繰り広げられる非音楽的な演奏の多い事! けれど、それは単に弾き手の責任です。 ツェルニーの練習曲の中には、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンを演奏する上で大変に役立つ音型や運指が多
く含まれているのです。

 ベートーヴェンの弟子でもあったツェルニーは大変なピアノの名手で、沢山の生徒を抱えていました。 彼は、その生涯に膨大な数の練習曲を作曲しましたが、それは沢山の生徒を抱える中で、モーツァルトやベートーヴェンの曲を弾きこなすためには、基礎となるテクニックを習得する必要を感じた、という事なのでしょう。 曲の中には、モーツァルトやベートーヴェンのソナタや協奏曲の断片が随所に現れます。 学習の途中で、いきなりソナタや協奏曲に取り組めば、音楽的な面、技術的な面、様々な課題を一度に目の当たりにする事になってしまいます。 曲毎に取り組むべき課題が絞られていて、ひとつずつ階段を上がる事が出来るのは、ツェルニーの練習曲の利点でしょう。 30番、40番、50番・・・と全曲クリアする必要はないかも知れませんが、殊に日本人の手の特性には無理のない教材だと思います。 ツェルニーの奏法が古いという意見が正しければ、「モーツァルトやベートーヴェンの奏法が古い」という事になってしまいますが、決してそんな事はありません。 ただし、くれぐれも、「ツェルニーの練習曲だから」と、無味乾燥に演奏しないで欲しいと思います。
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